ニュースリリース

2016年

2016年09月28日

革新的なプラズマ洗浄プロセス「Aqua Plasma™」を開発

 当社は、これまでにないプラズマ洗浄プロセス「Aqua Plasma」を開発しました。Aqua Plasma は原料として水蒸気を主体として用いた安全な洗浄、表面改質方法であり、フロンガス系等を使用しない新しい洗浄方法として、半導体製造工程や電子部品、医療・バイオ等の分野への応用が可能です。すでに、LEDの銀電極の洗浄プロセスでは高い洗浄効果を実証しております。

 

従来のLED銀電極洗浄での問題点

LEDは近年、液晶モニタのバックライト、照明、自動車のヘッドライト等の光源として幅広く用いられています。用途の拡大に伴って、LEDパッケージは小型化、高性能化が進んでいます。他の半導体と同様に、LEDパッケージにおいてもプラズマ洗浄は電極の接合や樹脂封止といった工程で、接合強度や濡れ性を確保するために有効ですが、LEDパッケージでは電気的、光学的に優れた「銀」が電極や反射材として用いられる特徴があります。

従来より、高分子ポリマーの親水化や医療材料・器具等の滅菌、生体適合性の改善、接合・接着性の改善、有機物の除去等を目的とするプラズマ洗浄では、酸素プラズマによる酸化処理が広く用いられています。しかしながら、酸素プラズマ処理では銀電極が黒く酸化変色するため使うことができません。

また、還元作用のある水素プラズマを用いると銀電極の酸化変色を防止しながら洗浄や表面を改質できますが、水素ガスは漏えい時のリスクがあり、その安全対策が必要になるためこれまで多くは利用されておりません。

これらの理由から、これまでは酸化作用のないアルゴンプラズマ処理がLEDパッケージの洗浄に用いられてきました。しかし、アルゴンプラズマは化学的な反応のない物理的な洗浄方法であるため、有機汚れだけでなく銀電極もスパッタリングして周辺に再付着させるため、輝度の低下を招く問題があります(表1 LEDパッケージのプラズマ洗浄比較表)。

 

1 LEDパッケージのプラズマ洗浄比較表

 

酸素

水素

アルゴン

Aqua Plasma

洗浄作用

化学的

化学的

物理的

化学的

問題点

銀電極の酸化変色

ガス漏えい時の危険性が高い

銀電極のスパッタによる再付着

なし

 

 

Aqua Plasma の洗浄効果と特徴

Aqua Plasma は銀電極に対しては還元効果があり酸化変色を防止しながら、有機汚れも効率良く洗浄できます。また、原料は水蒸気を主体にしており安全かつ低コストです。さらに、化学的な洗浄方法であるため銀の再付着が生じません。水蒸気を原子状酸素と原子状水素に分解するため、酸化効果を目的とする場合は酸素濃度を高め、還元効果を目的とする場合は水素濃度を高めることで任意の制御が可能です。Aqua Plasma の最大の特徴は、通常半導体プロセスでは水分が嫌がられますが、それを逆手に取っており、しかも、水素やフロン等のガスを使わない安全かつ低コストで環境負荷の低い画期的な技術であることです。サムコはAqua Plasma の原理を特許出願しております(特開2015-160192

また、Aqua Plasma LEDだけでなく、銀を電極とする他のデバイスにも応用できます。すでに、LEDメーカーだけでなく、電子部品メーカーにもAqua Plasma を採用いただいており、問い合わせも増加しております。さらに、銀以外の金属電極でも還元効果を確認しており、バイオ・医療分野など幅広い分野への応用の研究を進めてまいります。